動物の”かたち”をテーマに研究しています
私の研究者としての来歴を知るには、日本哺乳類学会の和文誌、哺乳類科学2017年12月号に掲載された
奨励賞受賞記念記事(奨励賞受賞者による研究者紹介)をご覧になるのが良いかもしれません
いくつか重要な研究、個人的に面白いと思っている研究業績についてまとめたページをつくりました
1)カモノハシに関する研究
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カモノハシとその祖先である化石種オブドゥロドンとを比較した研究
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カモノハシ外交の歴史
2)食肉目哺乳類に関する研究
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食肉目臼歯形態における食性適応のパターン解明と、それに影響した発生モデルと遺伝子を遺伝子改変マウスや、食肉目内における分子進化から解き明かした研究
以下は院生時代に書いた文章ですが、今も該当する内容ですので、そのまま掲載しています
研究の源流:
幼い頃からのカモノハシ好きが高じて哺乳類の進化に興味を持ちました。哺乳類に特有な形質がどのように進化してきたかを、比較形態学によって明らかにしたいと考えています。哺乳類に特有な性質である、歯の形態の複雑性、多様性と異型歯性に興味を持っており、歯の形態がどのような機能をもち、どう適応進化してきたか、そこでどのような発生のしくみが進化してきたかという疑問に取り組んでいます。適応によって速やかに進化する形質と、系統的、機能的な制約のかかる形質を区別して理解することで、ゆくゆくは歯しか見つかっていないカモノハシの祖先たちの生態を復元できたらと考えています。
研究テーマ:
(1)変異性が形態進化に与えた影響
変異性(変異の傾向)は、形態進化を拘束し、また促進するものとして、近年その重要性が議論されています。変異性は個体変異それ自体から推定されますし、変異性を生み出す要因となる発生のしくみや、ヘテロクロニーによる進化を可能にする、発生トラジェクトリにおける形態の変異などからも推定され得ます。そのようにして生み出された変異は自然選択や中立進化の源であり、形態進化の基礎となります。 私はこのような変異性自体が形態進化にどのような影響を与えてきたか、比較形態学の手法を用いて研究しています。なかでも、平行進化に寄与する変異性と発生メカニズムを明らかにすべく、頭骨と歯の形態進化に着目して研究を進めています。
また、形態進化をアナロジーとして、企業の事業ポートフォリオや人事制度といった、”変異性”と”自然選択”が影響するさまざまな事象に関しても興味を持っています。
(2)生物多様性それ自体をデータセットとして用いる進化発生学
実験室においてヒトがモデル生物を用いて遺伝子改変動物を作るように、自然界は種間変異・個体変異のレベルで、多様なGenotype-Phenotypeを持った生物を生み出してきました。現在の進化学が持っている複数のアプローチを用いることで、これらの多様性(表現型)を生み出した発生メカニズムや遺伝子に関する知見を得ることができると考えています。この手法の利点は、多額の予算を必要とせず、モデル動物では得られない表現型についての知見を得られることです。
(3)博物館標本の利用
博物館標本は自然史学がその数百年の歴史で蓄積してきた、情報の宝庫です。これまで博物館標本は、分類学や生物地理学、進化学における適応進化の研究など、限られた分野の研究に用いられてきました。私は博物館標本をさまざまな分野で活用できないかと考えており、発生モデルの検討をおこなうなど、いくつかの試みを行っています。
(4)比較形態学の応用
実験生物学のさまざまな分野において形態形質(表現型)の比較・解析が行われますが、多くの研究では単純な観察のみで発見できる、目立った変異に注目が集まる傾向にありました。一方で、比較形態学は形態それ自体を対象とすることから、さまざまな形態変異を検出する手法を生んできました。私は比較形態学の手法を用いて、今まで見過ごされてきた、(しかし重要性のある)変異を明らかにすることを目指し、他の分野の研究者と共同研究を行っています。